3years

サックスやら映画やらなんやら。

虎に美酒。

虎を飼っている。

いつもは檻の中。

虎のことを、虎と名付けたことに特に意味はない。

それ以上でも以下でもないのだから。

扉は決して、鍵では開かない。

たまに開くことがあったとしたら、偶然であり必然だ。

大体の可能性を持って、

自動ドアのように開くとしたら、

それは美酒を持ってきた時に限る。

虎は悠然とした足取りで、檻から出てくる。

警戒をおよぼす黄色とダンディな黒色は、

ほんのりと赤みを帯びる。

獲物を狩る時間だ。

虎自身が本能のままに後ろ脚に力を込め、

風よりも速く駈けていく。

獲物の事情など考える必要があるだろうか。

否。

食物連鎖の運命に足を委ねたに過ぎない。

甘美な匂いと、のどを唸らす美しき酒。

飲めば飲むほどに、逆立つ体毛は風になびく。

いざ、前足をもって近づき、きらりと光る牙。

獲物はそっと眼を閉じる。

食うと食われるの純粋な関係の遂行。

しかし、お酒は赤みを帯びさせるだけ、

獰猛な本能を加速するだけではない。

ありとあらゆる筋肉でさえ、ゆるゆると緩める。

ひと思いに嚙み千切ればいいものを。

ただ、獲物の薄い皮を撫でるだけ。

ちらっと眼を開けた獲物は、こう思うに違いない。

あなたはなぜ一瞬で息の根を止めてくれないの?

虎は、自らに向けられたその瞳に逆らうことはできない。

事実はどうあがいても、事実なのだから。

おずおずと千鳥足で去る。

今日も狩りに失敗した。

睡魔にねころがる刹那、明日は美酒に負けまいと決意する。

それもまた夢と一緒に消えてしまうというのに。

虎に美酒。

酔うては事をし損ずる。

飼い慣らせるものだろうか。